Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

『偉大なる道』にまつわる人物いろいろ

この本には敵味方いろいろな歴史上の人物も登場してくるので、読んでいて興味がつきない。 朱徳が対峙してきたのは地主などの特権階級からはじまって、清朝の西太后、袁世凱や蒋介石とその周辺の軍人政治家たち、外国の帝国主義者たち。 朱徳が語っているよ…

『偉大なる道』にまつわる儒教いろいろ

本の題名はもう忘れてしまったけれど、政治哲学者ハンナ・アーレントの「個人にいったん身についた観念を取りのぞくことはむずかしい」という内容の文章を読んで、静かな納得を得たことがある。 『偉大なる道』は、儒教精神でつちかわれた封建社会から脱皮し…

『偉大なる道』にまつわる遺伝いろいろ

数年前、元力士と綺麗な顔立ちのアナウンサーを両親にもつ息子が、靴職人というユニークな職業についたという話題を知ったとき、「いい仕事えらんだな」と感心したり、顔立ちや雰囲気が両親に微妙に似ていて、DNAがもたらす不思議さを感じたものだった。 い…

『偉大なる道』にまつわる養子いろいろ

もう十数年前ごろにネットで、ハリウッドの俳優アンジェリーナ・ジョリーの離婚に関するニュースが流れているのを興味深くみた記憶がある。 有名人の離婚ニュース自体はありふれていてさほど気にもとめなかったけれど、彼女が実子以外にアジアの子どもを養子…

族譜の思い出

韓国語では「チョッポ」と発音する。 父系血縁集団である宗族の重要な人物の事績や重要な事件や家訓などを記載した文書である。中国が発祥で朝鮮半島も影響を受けて作られたもので、15世紀まで遡るらしい。 15世紀に何かあったんだろうか? それとも16…

『偉大なる道』にまつわる留学いろいろ

現在の中華人民共和国の建国をになった中国共産党の中心人物たちに留学経験者が多いことは気づいていた。本を読んでいるときにちょっと気になる人物が出てくると、ネットで調べてみたりするが、その中で「いわゆる勤工倹学でフランスへ」なんていう文面を見…

『偉大なる道』にまつわる名前いろいろ

アグネス・スメドレーの『偉大なる道』は朱徳の波乱万丈の半生だけでなく、中国の封建社会での農民の暮らしぶりが細かい所まで書かれている。 中国とベルギー人とのユーラシアンだった作家ハン・スーインは朱徳と同じ四川省の生まれだが、何代も前から読書人…

『偉大なる道』にまつわる言語いろいろ

中国が多言語国家であることに気づくまで、日本は日本語を母語にする人々の国であり、韓国は韓国語を母語にし、中国は中国語を母語にする人たちの国だと漠然と捉えていたように思う。 ところが、アジアのことをいろいろ知るようになって、学校教育を受けた中…

『偉大なる道』にまつわる客家(ハッカ)いろいろ

客家(ハッカ)いう言葉は、アジア図書館に勤めていたころ初めて聞いた。 それ以来何だろうとずっと気にはなっていた。 どうやら中国の歴史において、被差別者集団として扱われた時期があったらしいと知ってなおさらだった。 台湾出身の女性留学生に講演して…

『偉大なる道』にまつわる出版いろいろ

国家的偉業をなした人物の伝記はその国でたくさん出版されてきている。 『偉大なる道』で描かれている朱徳についても、中国では国家的事業としてたくさんの伝記が出版されてきているはずだ。 ただし、偉大なことは教育を通じて認識しているけれども、もう過…

従軍慰安婦についてはあらたな表現作品を望む

前回の従軍慰安婦に関する記事のつづきになる。 今何が政治的、外交的に日韓で何が問題になっているかをじっくり情報を追いかけて考えてきたわけではない。 ただ気になるテーマであるので自分なりの知見で考えているだけ。 日本軍の戦地における従軍慰安婦に…

従軍慰安婦の時代背景を文芸作品で考える

作家宮尾登美子の文体が好きで、エッセイを若い頃よく読んだ。小説は1冊も読んでいないが、映画化を通じて花柳界(この表現でいいのか?)という、普通の人なら書けない世界で生きる女の人生をたくさん描いていることはわかっていた。 彼女はとてもめずらし…

戦争体験談の中できいた従軍慰安婦

ネットでまた従軍慰安婦という言葉が目に付いたので、ブログの引越し最中なので過去の文章を探し出して編集し直した。 従軍慰安婦について書かれた本を1冊も読んでいないし、こだわって詳しく調べたこともない。 なので、日韓のあいだで、今何が問題になっ…

海を見つめる父

幼い頃両親が離婚したとか、片方の親が外を向いていたり、両親の相性が合わなかったために家庭内が落ちつかなかったという話はたくさんありすぎて、さほど珍しいものではないとは思う。 歳を重ねてきて見聞きする限り、どこの家庭にもそれぞれ独特の問題があ…

父を案じる親族の記憶の原点は釜山からの国際電話

学生の頃一人で釜山に行き、初めて父の親族に会ったとき、 「ここを切って一人で生きたのか……」 という感慨で油断すると涙腺がゆるむので、気を張っていた記憶がある。 妹も同じ感慨をもったと聞いた。 父は自分の人生を振り返り後悔することが多かったけれ…

朝鮮戦争前夜の香港をえがいている『慕情』

文庫本『慕情』(角川文庫)著者ハン・スーインは、「もう読み返すことはない」と思い手放した。 この本はアメリカ映画「慕情」の原作“A Many-Splendored Thing”(多くの輝けるもの)の全訳だった。 もう絶版で図書館の書庫におさまっている作品だ。 ネットで…

柳田國男の『遠野物語』にふれて

ちょっとゆっくりできる冬がすぎて春になると、畑での作業も増えて、わずか数時間戸外ですごしただけで、自宅で回復するまでに時間がかかるようになってきた。 自宅ではごろんと横になってネットで情報を読んだり、耳元でラジオを聴く時間も増えてきた。 そ…

『キューポラのある街』を久しぶりに鑑賞

1年前『キューポラのある街』をテレビでやっていることがわかり久しぶりに観た。数十年ぶりなので、あらためて知ることもあり、思わず涙ぐんでしまったり、おかしくて苦笑いしたり最後まで楽しんだ。 吉永小百合さんがほんとにいい俳優だということを再認識…

友情と擬似家族をえがく韓国ドラマ「黄金時代」

十数年前の韓国ドラマ「黄金時代」は友情と擬似家族もテーマにしているように私は見えた。日本以上に家族や一族意識の強い儒教伝統社会において、親以外の血縁がほとんど出てこなかったことが印象深い。 焦点をしぼるために、あえて主人公たちをみな一人っ子…

韓国ドラマ「黄金時代」を観て戦中の徴兵制を考えた

十数年前にみた韓国ドラマ「黄金時代」は戦中のことを考えさせてくれた。 ドラマは民族系銀行の内紛の周辺を描いているので、戦時色はあまり出ていなかった。 本土とは違い、朝鮮半島には空襲もなかったし、強い思想統制もあったので、表面的にはのんびりし…

日韓併合時代をえがく韓国ドラマ「黄金時代」

もう十数年前に観たドラマだったけれど、とてもおもしろかった。 きっかけは、ネット上で日韓併合時の朝鮮半島や日本本土が描かれている珍しいドラマと知ったからだった。途中で挫折した「チャングムの誓い」と違い、全20話とそんなに長くないので、とりあ…

韓国ドラマ「黄金時代」を観て日本語とKoreanを考えた

10年ほど前、韓国ドラマ「黄金時代」を興味深く観た。 かわいい子役の主人公たちはやがて青年になり、戦中の朝鮮半島が舞台になったので、当時の日本語と朝鮮語の使用について考えてみた。 植民地時代だからといって、朝鮮半島は一様な日本語使用社会では…

森崎和江さんが語る植民者二世の日本語と母語

女性史の在野の研究家でもある作家森崎和江さんの父親は、日韓併合後の朝鮮半島で現地Koreanの五年生の中学校である高等普通学校の教師だった。 この普通ということばがつくと現地Koreanの学校になる。 森崎さんは1927年に朝鮮半島で生まれたのだが、ご…

日本料理の美意識と独自性

昔むかし、マレーシアの若い女性留学生と食文化の違いについて話していて、 「わたしは韓国人と台湾人とは結婚できる」 というので、理由を聞くと 「食べるものが似てる」といった。 「なるほどな」と思ったものだ。 これは食生活だけに限った世間話で、実際…

キムチは自らの地位を築いた!

よく買い物をするスーパーの漬物コーナーでは、梅干、たくあん、キムチを並べる面積はほぼ同じで、他の漬物よりも圧倒的に広い。 いつからこんなに普及し始めたのかなと思う。 もう数十年前からの傾向かな。 私は結婚するまで、キムチを買ったことがなかった…

在韓被爆者に寄り添った松井義子さん

在韓被爆者の救済に中心的役割を果たした「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」の代表をなさっていた方である。 1998年12月に70歳で亡くなられたことを新聞の小さな死亡欄の記事で知った。 植民地だった「満州」の大連で生まれ、戦後無教会派のキリスト者…

孫文研究家故山口一郎氏への謝意

大阪でアジア図書館を運営している市民団体アジアセンター21の代表をなさっていた山口一郎氏が亡くなったことは、当時購読していた新聞の訃報欄で知った。 たしか、学会が何かの出席のために中国に滞在していたときに、ホテルで入浴中に亡くなられたと記憶…

朱徳の半生記『偉大なる道』を読んで

こんなに本の中の登場人物に愛着をもって読みすすめたことも珍しい。勢いで読んだ1回目、少し余裕をもって読んだ2回目よりもはるかに多くの知識、発見、再認識をえたし、現代の国内情勢を考える目も少しやしなわれた感じがする。とくにアメリカの対アジア…

『偉大なる道』第12巻「偉大なる道」を読んで

『偉大なる道』(アグネス・スメドレー著、阿部知二訳)を最後の巻まで読み終えたことになるが、もう4、5回目になると思う。 一冊の本をこれほど繰り返し読むと、前回読んだときはよくわかっていなかったことも頭の中で整然としてくる。この巻は現代史にぐ…

中国人民の偉大な解放闘争を象徴する朱徳の人生 『偉大なる道』第12巻⑤ー7

四川省の貧農の子、朱徳将軍はいま六十歳になった。11月30日、戦闘のまっ最中に、華北の人民と部隊は、彼を祝福して愛情と激励の言葉をおくった。はるかな満州の戦地から、林彪の幕僚が打電してきた。 「貴下の六十歳の誕生日を祝うため、われわれはひとつの…