Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

2020-11-26から1日間の記事一覧

華南の上帝礼拝集団 『偉大なる道』第1巻②ー11

われわれは、太平天国の壮大な悲劇に近づいてながめるときに、一種の畏怖のようなものを感じる。その反乱の兆しが1847年におこるはるか以前に、中国の情勢は、しだいに満州朝の専制への反抗の気運を高めてゆきつつあった。1839年のイギリスとの第一次阿片戦…

民間伝承になった太平天国 『偉大なる道』第1巻②ー10

「農民たちは石達開が殺されたことを認めたくなかったのだ」と、朱将軍は悲しげにいった。「それを認めることは、希望を捨てることだった。しかし、実際は石は軍とともに清朝に降伏し、彼は成都で滅多切りにされた。身分の自由を約束された武装解除の兵士ら…

伝説になった石達開 『偉大なる道』第1巻②ー9

「暗い、月のない夜なんぞには、今でも、大渡河(だいとが)の渡しのところや、みな殺しにされた町のあたりで、死んだ大平軍の幽霊が泣いているのがきこえる」 ……機織じいさんは、いつのまにか数がふえた聴き手の、緊張した顔を眺めまわし、それからつづける…

翼王石達開の最期 『偉大なる道』第1巻②ー8

「このごろは、貧乏百姓は剣を取って石達開の首を切って満州にわたした、と話すものもおる。それはうそだ。翼王は死ななかった。総督駱(らく)がほざいたように、成都で滅多切りされたんでもなかった。 「石達開は石の河原から陣屋にもどった。そこには四番…

大渡河での翼王の決断 『偉大なる道』第1巻②ー7

「ある町では、『閻王』みたいな金持の地主が石達開に銀一箱と奴隷女をおくったが、王はえらくおこっていわれた。 『お前はわしを役人とでも思っとるのか。わしは命令する。土地は小作人に分け、奴隷は自由にしてやり、すべての銀はみなにくばれ。日が暮れる…

翼王とよばれた石達開 『偉大なる道』第1巻②ー6

長い褐色の手としわだらけの顔の老いた職人は、口をひらく。 「満州族のやつらは、人民をしぼることがうまかったなあ。人民だって、大豆じゃないから、やつらが御殿建てるたんびに油しぼらせんわい、ちゅうことを教えてやったんじゃ。今じゃ、どこの野郎でも…

太平天国の敗残兵 『偉大なる道』第1巻②ー5

年ごとに家にきた旅職人たちについて、朱将軍はいった。 「彼らはのちの産業プロレタリアートの先駆者だった。だから、農民よりもひらけていて、独立的で、鋭敏だった」 職人の中には、19世紀半ばの太平天国の乱について話すものがいた。それは、当時までで…

旅職人が語る中国の歴史 『偉大なる道』第1巻②ー4

毎年、それぞれの季節に旅まわりの職人が、街をはなれて、この大街道にやってきて、それぞれの専門の技能をもとめる家をたずねながら、村から村へとわたり歩く。大工、鍛冶屋、畳屋、機織(はたおり)など、みな腕のいい職人で、商売道具は自分で持ち歩いて…

大街道の旅人の語り 『偉大なる道』第1巻②ー3

「伏犬丘」のほとりにしゃがんで、「小犬」は世界が流れてゆくのを見る。稀にしか門を出ない郷紳の家の女が籠でとおり、百姓女たちが、ろばの背にゆられながら、どこかの寺へ子どもを授けたまえと祈祷しに行ったり、占い師のところへかよったり、年一度の里…

大街道をいきかう人びと 『偉大なる道』第1巻②ー2

朱家の人たちは、そうした古来の祭祀を信じ、作物をつかさどる土地神や、さまざまな善い鬼神と悪い鬼神の存在を信じていた。出没自在の狐の霊はとりわけ厄介で、さまざまないたずらをしたり、化けてさまざまなもの、たとえば髭を生やした老人や、また相手が…

四川省の朱徳の家 『偉大なる道』第1巻②ー1

朱将軍が四川についてかたるときは、いつも景観のすばらしさにふれた。省の西境の空にえんえんと連なる大雪山脈から、東につき出した長い山脈の一部分が、彼の家の上にそびえていた。その大雪山脈と北につき出した支脈が、省全体と赤色盆地といわれる平野を…

封建的不文律 『偉大なる道』第1巻①ー9

わずかな怠慢や油断もゆるされず、まわりの家同様に、朱家にも週の休日などは存在しなかった。身分の高い人びとは、旧正月には1週間から2週間くらい休息を楽しんだが、小作や貧農は正月さへ休めない。農民は、冬のあいだは少しぐらいのんびりすることができ…

封建的因習 『偉大なる道』第1巻①ー8

「祖母は並はずれて腕ききで、差配ぶりもりっぱで、棺桶にはいるまでは、一家のものといっしょになって、体力相応に働きつづけた。地主へ小作料を完納することを祖母は一番苦心していた。小作料は穀物の収穫の半分以上だったが、そのほかにも、卵、ときおり…

祖母のやりくりと暮らしぶり 『偉大なる道』第1巻①ー7

「祖母が家全体の家計をやりくりし、指図した」と朱将軍が説明する。「祖母が、家族の男と女にそれぞれ仕事を割りあてた。野良の力仕事は男、軽い野良仕事と家事は女と子どもが分担した。祖母の4人の嫁は、順番で1年ごとに家族全体のための炊事番になり、小…

朱の家 『偉大なる道』第1巻①ー6

朱家は数多い「客戸(かくこ)」のひとつだった。ということは、彼らはよその地方から移住してきて、まだ八代になっていないので、はえぬきの人または郷土創建の家系と見られる権利は獲得していなかった。朱の一族の最初の一団は、白蓮教徒の反乱の直後、つ…

養子縁組 『偉大なる道』第1巻①ー5

女の義務とは、働くこと、それから、家系をつづかせ家の労働力を増やすために子を生むことであった。その古来の義務がはたせなかったら、夫は彼女を去らせることができた。妻の方からはどんな理由があっても、離婚することはできないが、夫はさまざまな理由…

家族のこと 『偉大なる道』第1巻①ー4

母親のことを話すときには、朱徳将軍の顔には愛と悲しみの表情がただよう。母親は二十歳そこそこで彼を産んだ。彼女は、たいていの女たちよりも背が高くてがっしりしていた。着ているズボンと上衣はつぎだらけのぼろぼろで、手には太い血管が浮きでて、仕事…