Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

アジア図書館の本 ーベトナムー

「昭和の人間」のなので、ベトナムと聞けば、やはり「戦争」ということばを連想してしまう。

年輩の方なら、1960年、1970年代の「べ平連」の運動を思い出される方も多いはず。

私自身は生まれてはいたが、その熱気を感じる年齢層ではなかった。
 
現在はシリアなどからの船に乗ってヨーロッパに難民となってやってくる映像がよく流されていて、「難民」が時代のキーワードになっている。

幼い子どもを連れての家族ぐるみの命懸けの脱出行動を見ていると激動の時代を迎えていることを感じる。

 

1990年前後の難民といえば、ボートピープルと表現されるベトナム難民のことを思い出すのだが、アジア図書館で働くまでは新聞やテレビでしか知らない遠い存在だった。

しかし実際にアジア図書館を通じて何人かの難民と出会ったことがきっかけで、ベトナム難民がなぜ住み慣れた地を離れようと決意したのかという点にとても興味を持つようになった。

 

私はベトナム難民の人に実際に接していたり、本雑誌を読んだりしているので、たとえばヨーロッパに来るシリアなどの難民が故国では中流階級ぐらいに属する人たちだろうということは想像できる。

故国で無学文盲、食うや食わずの極貧生活をしていた人たちが難民になったのではない。


とにかく難民を出すにいたったベトナムの歴史的社会的状況を知りたいというのが実際に本を手にするきっかけだった。

 

書架には、ベトナム戦争当時発刊された時代の証言としての本が多かった。

古本として出回る本の数と、新刊として出版される本の数は比例関係に近いと思っているので、当時ベトナム戦争に関する書物が多く出版された事をしのばせてくれた。

ページを開くと、日本でだれがどのような行動をとり、本を書いたか、何が報道されたか、外国の知識人が何を訴えてきたのか伝わってきた。

1966年(昭和41年)発行の「ベトナム研究会」編集による1冊の写真集『ベトナム』を手にしたとき珍しい本だと思った。

発行は当時社会党の国会議員であった楢崎弥之助氏。なつかしい名前だ。

この写真集、縦25cm横40cmほどの一昔前どこの家庭にもあったアルバムのように重量感のある本だった。

発行年を振り返れば、ベトナム戦争真っ只中とわかった。


表紙をめくると、
「民族の統一を願って戦うホー・チ・ミン大統領」
「自由南ベトナムの指導権を担うグエン・カオ・キ首相」
のそれぞれの顔写真が大きく載っていた。
最後のページは「ベトナム民主共和国国家歌」と「ベトナム共和国国歌」も紹介されていた。
中身は南と北の状況を伝えるページ数が平等に振り分けられ、対等に理解しようという姿勢が感じられる構成になっているのがよかった。

まだ「イスラム」という言葉が時代のキーワードになる前のころだった。

アジア図書館のベトナムコーナーの書架は、かつてこの地で何が行なわれたかを語る気概を持っているように感じたものだった。