Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

アジア図書館の本 ーミャンマー(ビルマ)ー

アジア図書館の東南アジアコーナーの書架で一番好きだったのはベトナムコーナーで、次いで興味を持ったのはビルマコーナーだった。

1989年にミャンマーと正式に国名を変えているので、書物の題名もビルマミャンマーが混在している。
具体的には発行年によって「ビルマ」「ビルマミャンマー)」「ミャンマービルマ)」「ミャンマー」と4種類の表記があり、この国の抱える政治的な事情を感じさせてくれた。

現在はミャンマー連邦共和国が正式名称で、首都は2006年にヤンゴンからネピドーに移っている。

普段の呼称はミャンマーでいいのかな。

6割を占めるビルマ族を筆頭にたくさんの少数民族からなる多民族国家で、文字も○が横に並んでいくように見えて愛嬌がある。

但し学習するにはハードルが高そうだ。


「ビルキチ」ということばを知ったのも、このコーナーの雑誌からであった。

太平洋戦争中ビルマに駐留した若い日本兵が今でもこの国に強い思い入れを持ち、「ビルマキチガイ」を略して自分たちを呼ぶことばだったらしい。

もうすでに死語だ。

 

ビルマ戦線から戻ってきた元将校や兵士の方はほとんど亡くなっている。

アジア図書館で体験談の講演をしていただいた元将校の方もすでに亡くなっている。
棚に並んだ1冊を示し、この本に自分の名前が出てくると紹介してくれた。

この方も生活が落ち着いてからは、アジアの留学生と積極的に交流しながら、日本語講師をかなり高齢で亡くなるまでやっていた。


戦後よく読まれた『ビルマの竪琴』の主人公水島上等兵に会えるのもこのコーナー。
作者竹山道雄は当初この本を児童書として書いた。
だから公立図書館では児童書コーナーに並んでいるはずである。

しかしアジア図書館はアジアを理解するための資料に大人用、子ども用に分けて考えないので、文学の仕切りで隣り合わせに並ぶ。


内容的には子ども向けだし、著者はビルマ戦線を経験していないところもあって、「実際はあんなもんではない」となるようだ。

大人は、死んだ兵士の野ざらしの骨をきちんと弔うまで帰国しないと決断した主人公に感動してしまう。

誰からも好まれる作品だったと思う。

ちょっと「忠臣蔵」みたい?
 
で、このコーナーで一番目に付くのは、太平洋戦争の「ビルマ戦線」の体験記であった。

この種の体験記の数でいえば、ビルマコーナーが一番多かったのではないだろうか。
文学の仕切りではなくて、社会科学系の仕切りで並んでいたように記憶している。

ビルマインパール作戦」をご存知の方は多くないと思う。

現在はほとんど忘れられつつあるように見受けるが、戦中戦後いろいろな立場から書かれたものが出版されてきた。
書架を眺めていると、一時出版ブームがあったのではないかと思わせてくれた。
どちらかといえば、奇跡的に生き残った将兵たちの体験談という形でまとめられているのが多いと思った。 

悲惨すぎてまともに扱った映画化なんてできなかったと思う。

戦死よりも栄養失調による病死がほとんどだったのではないだろうか。

戦後まもなくの頃はビルマ帰りといえば、地獄を見てきた人間のように周囲から見られたという内容を小説で読んだこともある。

1990年代、終戦記念日あたりにこのコーナーの前で「無駄死っていわれてたまるか」とつぶやいたご年配の男性を覚えている。

世間の論からいったん離れて、戦死についてや「靖国神社」のことを考え始めたきっかけだった。

それまではほとんど靖国神社のことには関心がなかった。

今振り返ると、戦死した戦友のことを思う気持ちはわかるけれど、亡くなった人には感情なんてないので、「無駄死」を認めてしまうと、生き残った自分が救われないのではないかと強ばった姿から想像もした。

 

現在の靖国神社は生き残った者の心の負担を軽くしてくれた国家的施設と考えている。

いろいろな主張があるので、とりあえずここまで。