Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

家族への告白 『偉大なる道』第2巻②ー8

 2,3日を養父の家ですごしたのちに、朱徳は、祖先伝来の家に実父母と祖父母をたずね、それからまたほかの親戚をたずねた。どこへ行っても同じようにもてなされたが、たずねたその日がすぎると、自分は厄介者にされていて、みなは自分が出てゆくのを待っていると彼は感じた。

 

 祖先の家をたずねていたときに、ついに彼は嘘をついていたことを告白し、これから儀隴県で体育の先生をするといった。そして、たたみ掛けるように、金にはなるのだから家の借金は返してゆける、と説明した。

 

 「私の告白の反響は恐ろしいものだった」と朱将軍はいった。「はじめに、打ちのめされたというような、ながい沈黙があった。それから父が、体育とは何か、とたずねた。私が説明すると、父は叫んだ。家じゅうのものが、ひとりの息子に餓死から救ってもらおうと、12年間も苦労して働いたあげく、わたしは子どもらに腕や足をふりまわすことを教えるんだと聞かされるのか、苦力(クーリー)でもそんなこたあできる、と叫んで、父は背を向けて、家を飛び出して、私がそこにいるあいだは、帰ってこなかった。その晩、私は母の泣き声をききつづけた」

 

 「あくる朝、私は、これから儀隴県に行って、友人が新学校をひらくのを手つだう、と宣言した。みなは、ほっとしたという顔色をかくそうとしたが、私にはわかった。母の目は、泣いたために赤くなって腫れていた。

 

 「私は養父の家に帰った。父が先まわりしていて、私が全家族の顔に泥を塗ったということを、すでに話していた。私が、どうしてあんな嘘をつき、あんなことをやったのかを説明し言い訳しているあいだ、養父は黙りこんでじっとすわっていた。私は、科挙の制度が変わったことも説明した。つまり、これからは、受験者はすべて、私がいままで習わなかった新学問――自然科学、国際法、歴史、そのほかの科目を修得しなければならない。旧式の塾などで習ったことは、ほとんど役に立たないことになった。それに、とにかく、高級試験に合格したところで、役にありつこうとすれば、大変な額の賄賂を出さないといけないなどというのが私の論拠だった。家は、そんな大金をそろえることはできない。万一できたとしても、それを返却するために、私は堕落した役人になって、いままでの役人らと同様に、人民をしぼりあげないといけないだろうが――新しい中国は、潔白でなければならないと思う。いま中国では大変化が起こっていて、そのなかで体育がどういう役割をもつか、ということも私は話した。