Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

『偉大なる道』第3巻「災厄と禍害」を読んで

蔡鍔(さいがく)がいなかったら、「中国の歴史の流れは、非常にちがったものになっていたであろう」という著者スメドレーの述懐がやっとわかってきた。

30代の若さで、結核治療のためにむかった日本の九州大学医学部附属病院で亡くなっている。

同じ中国人の仲間がいたこともあると思うが、当時の日本の医学がすすんでいたことも感じる。

蔡鍔の北京脱出を助けたといわれている女性はこの本では登場しないが、男と女ということでいろいろ脚色されて語られているようだ。

忠臣蔵でも大石内蔵助が芸者遊びをしていて「たいそうなことは考えてない」と周囲に思わせていたシーンと似ていると思った。

 

とにかく、蔡鍔を描いた映画やドラマには朱徳とこの魅力的な女性が出てくることがわかったので、機会があれば観てみたい。

一番新しい映画ではアンディ・ラウという二枚目俳優が蔡鍔を演じている。

 

朱徳の方は、身辺に大変化が起きた。

貧農から軍人として出世した朱徳が結婚する。

最初の夫人は息子を出産後病死。
その後、理知的な女性と再婚するのだが、殺害されずにずっと生きていたら、いい働きをしていただろうと思う。

この再婚した女性は朱徳の子を産まなかった。

朱徳は、軍閥闘争にまきこまれて、にわかに誕生した軍閥なら当たり前のこととして、この妻がいながら、別の多くの妻や妾をもつ生活をしていたようだ。

 

気になるキーワードの覚書。

善後借款―鉄路借款、弊制借款につづいてここでも借款だ。

日本の対華21カ条要求

結核朱徳がいうには知識人階級の病らしい。

土匪―ヨーロッパのバイキング? 

   領土が狭い日本ではイメージしにくい。

軍閥の抗争―純粋な国内問題ではない。

四川省―他の省にはないユニークな人材を輩出し、独特の抗争の舞台になっている。

    客家が多いから?

袁世凱ー光緒帝の暗殺指示は袁世凱がした、と光緒帝自ら死ぬ間際に断定しているら

    しい。ちょっとびっくり。最後の皇帝溥儀も同様の発言をしていたので確か

    なのだろう。

    世界史の教科書でしかなじみのない人だったが、要するに傀儡政権? 

帝政―欧米や日本は中国に対して、混乱→帝政もどき→混乱→帝政もどき……を望んで

   いた? 要するに自分たちの安全が保証されるなら、混乱はのぞましい?

暗殺―国民党をつくった宋教仁が暗殺されていることに衝撃。

蔡鍔―孫逸仙とは日本で面識があったのだろうか。

   痩身ということも結核になりやすかったのか、結核になったから痩身になっ

   たのか。

   理論家で理想主義の孫逸仙と緻密な軍事的企画力をもつ蔡鍔の組み合わせが見

   れなかったのはおしい。

アへン吸飲―アヘン戦争をイギリスの教科書ではどのように記述されているのか興味が

      ある。

少数民族―日本の場合、領土は海に囲まれているが、中国大陸は少数民族の住む地域に

     なる。
     島国と大陸との違いを感じる。

水滸伝朱徳と友情を培った土匪の首領が、口承文学として水滸伝に親しんでいたとい

    うくだりに感動。
    人はたとえ文字がなくても物語を求めてきたことを思う。

楊森―四川省軍閥に転向した朱徳の元同志だが、これからも登場してくる。
   台湾で運良く天寿をまっとうした人だが、軍閥として、おおいにあばれ、おいし

   いところを味わってきたように見える。

 

次の第4巻「探求」ではアヘン中毒を克服して、友人とフランス経由でドイツ留学を実現させる。蓄えがあったからできたこととはいえ、よく実現させたと思う。

そこで周恩来と出会い、一度は阻まれた共産党に入党することができ、一回り若い周恩来との友情を建国以降も保っていったことになる。

波乱万丈の物語の読者としてはまぶしいものがある。