Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

南昌蜂起決行 『偉大なる道』第6巻①ー6

 一瞬、部屋の中が、死んだように静まりかえった。大きく笑いながら、客の方をふりかえった朱徳は、こういう乱れた時世には、いろんな噂が流れるものだ、そんな話はまったく信用できない、とうちけした。

 

 「さあ、マージャンをつづけよう。流言飛語にいちいち耳をかさないようにしよう」

 

 椅子をうしろへはねのけて、ある将軍がたち上がって、いった――

 

 「たんなる噂にすぎないかもしれないが、今夜、なにか事件が起こりそうだということは、自分もきいてる。みな部署に帰ろうじゃないか」

 

 そこで、みないっせいにたち上がって、帰る仕度をはじめた。あまりしつこく引き止めると、かえって疑いを招くことになるので、朱将軍は、もっぱら冗談と笑いでわたりあった。客がみな帰ってしまった瞬間、朱徳は一目散に前線委員会にかけつけた。そこで委員会は、ただちに蜂起せよ、という命令を下した。

 

 この新しい命令が「鉄軍」全体にゆきわたるには若干の時間がかかった。しかし、まもなく、まず命令をうけとった一部隊から銃声がきこえはじめ、つぎつぎと全市にわたって、大浪がうねるように銃火の音がとどろきつづけた。朱徳と同志たちは、夜を徹して活動した。明け方までには、南昌の市は「鉄軍」の手中にはいった。それから数時間後には、遠く離れた村々まで占領した。さらに2日のちには、南昌の東南およそ40マイル(64キロ)にある戦略的要所、撫州の町を、敵の一連隊の手からうばいとった。