Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

『偉大なる道』第6巻「土地革命の開始」を読んで

この第6巻あたりからだんだん戦闘シーンや共産主義イデオロギーが出てきて、決して読みやすいものではない。
革命とはこういうことかと思いながら読みすすめてきた。

はじめて読んだときはもう数十年前で、そのときはこの巻の内容はほとんど理解できていなかったと思う。

やっと、太平天国の乱⇒辛亥革命⇒護国戦争⇒大革命(北伐)⇒蒋介石の裏切の流れが整理されてきた感じ。
繰り返しここまで読んでこれた理由のひとつは著者が女性であったこともある。

 

中心的に書かれているのは、朱徳も軸になって展開された1927年8月1日の南昌蜂起で、この日は現在の中国でも特別な記念日として祝日扱いになっているはず。

この南昌蜂起を起点に、農村での土地分配を本格的に実行していったのだが、どこで読んだかは忘れてしまったが、毛沢東が立案したと理解している。

 

南昌蜂起は、Wikiで検索すると、背広姿の朱徳が掲載されているように、朱徳の存在が効果的に使われた。

というのは、朱徳は南昌の警察関係や軍官学校も配下におく要人で、雲南軍の将校であり、四川省軍閥のひとりとして快楽的な生活をおくってきた経歴をもち、国民党の指導者としてしか知られていなかったからだ。

 

この蜂起の準備会議で、共産党関係のそうそうたる顔ぶれの指導者たちが集まったとき、朱徳は発言する毛沢東を薄暗い部屋で眺めた。

朱徳はそれまでは党の指示を受けるだけで発言を控えてきたが、この会議で、多分発言を求められたのだと思う、自分の今までの革命にかける熱い思いを語る。

朱徳毛沢東が実際に会うのはもっと先だが、この会議でお互い「この男は……」と思わせるものを感じとったのではないだろうか。

ずーっと読んでくると、映画を制作する監督なら、ぜったいそういうシーンにしたいところ。

 

さて、この南昌蜂起は前半は成功するのだが、後半はイギリス軍を含めた圧倒的に優勢な敵の前に悲劇が展開される。

しかし、朱徳たちは粘り強く生き延びていく。

ちなみに、この南昌蜂起に参加した唯一の有名女性は、周恩来夫人だったそうだ。


気になるキーワードは以下になる。

 

瞿秋白陳独秀のあとをついで共産党の指導者になった当時有名な作家。容貌は見る

    からにインテリで病弱な感じがする。政治的な人間ではないことを自覚して

    いたらしい。

 

土地革命―日本の戦後の農地解放がいかに平和な分配だったか。比較するものでは

     ないかも知れないが。

 

秋収暴動―中国だけのものかしら。

 

広東省東江地方―孫逸仙の保護のもとに最初に農民組合と農民自衛隊ができた地域

 

汕頭攻略―周恩来など多数の指導者が敗北して逃避

 

彭湃―この人のような貴い犠牲者が多かったのだろう。

 

インテリと労働者・農民の確執―

 

王佐と袁文才―元匪賊で毛沢東と同盟を結ぶ。

 

士気―ことを進めていくとき、正当な士気の高さは大前提。

 

広東コミューン―ソビエトもそうだが、実はいまだにこういうカタカナ歴史用語が

        よくわかっていない。

 

蒋介石―結果的に共産党を刺激して発展させていった要人のひとりに見える。

 

説得力―プレゼンテーションの力量。手段は何も言葉だけではなく、
    広く文学、芸術、生き方など分野は広い。
    特にその人の生き方が大事?

 

呉玉蘭―朱徳の夫人だった女性で、敵に無慙な殺され方をしてさらし首にされた。
    実は妊娠していて、朱徳毛沢東の前で大粒の涙を流して泣いたと

    どこかで読んだ。

    毛沢東も同じような経験をしているのだが、どんな言葉をかけたのかな。
    朱徳の二番目の夫人もやはり軍閥に殺されている。    

    このように夫人が敵に殺された指導者は多い。この時代指導者の夫人に

    なるのは覚悟が求められる。

 

井岡山―中国革命の聖地?

 

朱徳と歌の蒐集―朱徳はほんとに歌や音楽が好きだったようだ。

 

彭徳懐―一応富農出身だったらしいが、肉親に恵まれなかったことで何かと苦労した

     ようだ。朱徳がもし抗日戦で倒れていたら、この人が司令官になっていた

     と思う。どこで中国伝統の基礎教育を受け、共産党を受け入れ、ギリギリ

     のところで反乱を起こして朱徳たちと合流したか、波乱万丈の人生に

     興味がある。毛沢東嫌いの人は、この人を軸にして中国革命を理解して

     いけばいいのでは。

     実際毛沢東に不当な扱いを受けた?

     毛沢東とは同郷で親しい会話ができる数少ない人だったとどこかで読んだ

     が、実際のところでは相性が合いそうで合わなかったのだと推測する。

     ふりかえれば、こういう人間関係はどこにでもよくあること。  

     スメドレーは渋い人、エドガー・スノーはリベラルな男と表現していた

     が、兵士からの人気もあったそうで、個人的にも一押しの軍人だ。

     死後名誉回復を受けているらしいが、もしそうでなかったら、この本の

     読者としては納得できない。

     朝鮮戦争にも従軍して、なんと金日成から勲章をもらっている。

     日本では、朝鮮戦争は韓国からみた情報がほとんどで、北朝鮮側からの

     情報は少ないし、信用できるものがなかなか手に入りにくいと思っている。

     彭徳懐北朝鮮サイドのことを知っている人物のひとりだったということ。

     

 

『偉大なる道』(上)はここで終わる。

 

このブログの管理人は別に共産主義者でもないし、シンパでもない。

政治的な人間とも思っていないし、中国とか中国人という広すぎて実態がつかみにくいものに愛情を感じるというタイプでもない。

ただ朱徳の生き様に魅力を感じ、建国苦労話に同じアジア人として素直に敬意をもち、困難な時代に生きたスメドレーという女性ジャーナリストが仕上げた大作を蘇らせたいだけ。


隣国中国にいい意味でも悪い意味でも興味をもつ人は、建国苦労話を知っていても損ではないと思うが。

私を例にすれば、たとえば紅軍は中国人民解放軍にその後発展していったのだが、紅軍結成の初志を踏み外していないか考えてみる機会を提供してくれた。

 

続いて第7巻から『偉大なる道』(下)がはじまるが、餓死に追いやられるような過酷な圧迫を国民党軍から受けたり、それを突破していくシーンが多くて、血なまぐさい展開になる。

蒋介石は、共産党員を封鎖して餓死させようとほんとに考えていたようだ。


まだ道は遠いけれど、この作品のクライマックスと私が思っている長征まで理解しながら少しずつ読みすすめたい。