Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

反日反蒋戦線にめざめる敵の兵士 『偉大なる道』第9巻③ー2

 この日々の命令は、朱将軍がその後の18ヵ月間に書いた命令、報告、書簡、論文なども同じだが、さまざまな種類の紙に書かれていて、中国・チベット境界地帯の、おくれた原始的な生活を雄弁に物語っている。荒っぽく四角にちぎった古い軍用地図の裏に書いたものもあり、中国人が正月の祝いに使うけばけばしい色紙に書いたもの、チベット模様のついた厚く粗製のチベット紙や、軍の帳簿をちぎって書いたものもある。また中には、前のチベット文字を水や薬で消して、大きな粗製紙に書いたものもある。

 

 朱将軍がこの当時書いた論文のひとつに、『いかにして敵軍兵士を反日反蒋戦線に獲得するか』というのがある。その中に、捕虜となった四川軍の兵士が家族に送った手紙が引用してある。

 

 「四川軍にいたとき、紅軍は捕虜を殺す前に舌を切り取ると将校から聞かされていた。私の中隊全員捕らえられたが、身体をさぐられさえしなかった。一人の共産党員が私たちに話しかけてきた。金持ちが何人兵隊になっているかと彼がきくので、兵隊に金持ちはいないと答えた。軍閥のために戦って、君たちや家族にどんな報いがあるのかと彼がたずねた。私たちの家族は税金が増えるだけだし、私たち兵隊は何ヵ月も給料をもらわないことも多いと答えた。じゃあ、なぜ軍閥のために戦うのかと聞くので、命令されたからだと答えた。すると彼は「君たちは君たちと同じような貧乏人と戦って、蒋介石や日本人の走狗である金持ちの地主や軍閥を助けているんじゃないか」といって紅軍に加わるようすすめた。希望しない者には、家に帰る旅費をやるとつけ加えていった。私たちはいま紅軍にいる。四川軍とはすごくちがっている。将校も兵隊も、全く同じような生活だし、兵隊をののしったり、なぐったりする将校はいない。私たちは講義をきいたり、集会をひらいたり、うたったりしている」