Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

四川軍将校たちへの朱徳による公開状 『偉大なる道』第9巻③ー12

 1935年12月25日付のひとつの文章は、四川軍将校たちにあてた長文の公開状であった。簡潔で、しかも力強い文章で、19世紀半ばからその当時までの中国の独立のための闘争の歴史的分析ではじまっていた。

 

 この公開状には、東京と南京とのあいだの悪名高い塘沽協定だけでなく、1935年7月調印された何応欽・梅津秘密協定まであげてあった――この秘密条項は、南京政府が中国の抗日運動の全面的弾圧に同意したものであった。

 

 この文書は、朱徳の深い歴史的知識と見通しをしめすと同時に、どんなに不遇の境地にあっても戦いを求めつづける彼の情熱をしめしているものである。次に原文のまま抜粋しておく――

 

 「すでに2ヵ月間、アビシニア人たちは国の独立のために戦っている。アビシニア(エチオピア)はわずか1千万の人口と30万平方マイルの領土しかない小国だが、それでも人民は、人口も軍事力も数倍する帝国主義列強と戦っている。

 

 われわれ中国人は、数千平方マイルの領土と4億の人口、そして黄帝と呼ばれる先祖に始まる4千年の歴史を持っている。ところが国民党政府は、敵国日本に抵抗するために銃ひとつ取ろうとしないばかりか、次から次へとわが領土を日本にわたしている。

 

 アビシニア(エチオピア)戦争と日本の中国侵略は同じ侵略、分割、および植民地主義をめざす帝国主義戦争だ。どちらも第二次世界大戦に拡大してゆく前哨戦であり、その場合にはいかなる国も中立にとどまることはできない。迫りつつある世界大戦においては、中国は広大な戦場と化すだろう。つまり中国は肉になり、帝国主義者は屠殺人になる。

 

 われわれはみなこの国に生まれた。われわれはここに住み、ここがわれわれの唯一の故郷だ。われわれは、祖国の破滅を救おうと考えないほど奴隷根性になり下がることができるだろうか? 四川軍諸君! 諸君は何万という兵隊と優秀な近代兵器を持っている。どうして諸君は、独立のために立派に戦っている小さなエチオピアの例に習おうと考えないのか。わが国の勇気ある人士は、どうして祖国存亡の戦に踏み出そうとしないのか……

 

 ひたすら帝国主義のための露払いを目ざす反逆者蒋介石は、あらゆる抗日組織を破壊したり禁止したりして、日本帝国主義に対する忠誠を示している。自ら祖国を失うことを望む中国人がはたしているだろうか」

 

 この訴えは、つづいて四川軍に、紅軍とともに民族統一戦線を組織して次の3つの条件を遂行するよう、提案している。内戦を停止すること、四川軍の支配する全地域の中国人民に民主的権利を与えること、抗日義勇軍を組織し武装する権利を人民に保証すること。そして最後を次の言葉で結んでいた――

 

「諸君がこれらの条件を受けいれるならば、われわれと協議する代表を任命してくれたまえ。もし、まだ反逆者たちの命令に従い、人民を弾圧し共産党をせん滅せよという蒋介石の命令を実行するため、攻撃を続けるならば、諸君は帝国主義の前衛であり、帝国主義の道路掃除人である……いまや抗日の使命は中国大衆の双肩にかかっている。もし諸君が日本と戦おうと望むなら、諸君は大衆を恐れるべきではなく、大衆と責任を分け合うべきである。もし中国が隷属の底に沈むならば、諸君も免れることはできない。巣が落ちれば卵はわれる。諸君の目標は名誉と富だろうが、もし中国が亡びるなら、たとえ金持ちになり十万畝の土地を持ったとしてもどうなるだろうか……もし諸君がわれわれの提案をしりぞけ、日本帝国主義の召使いとして売国行為をつづけるならば、結局もたらされるのは、祖国と諸君の家族の破滅であり、諸君の名誉と肉体の破滅だ。その場合諸君は人民の裁きをまぬがれることはできない。諸君はいずれの道を選ぶか――いまこそ決意すべき時だ」