Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

朱徳の軍、涙と笑いにむせびながら紅軍と再会 『偉大なる道』第9巻④ー10

 ヘイテムは手紙のひとつに次のように書いている――

 

 「朱徳のことで、もっともおどろくべきことは、すこしも軍司令官らしく見えないことだ。まるで紅軍の親父といった印象だ。射すくめるような眼をしているが、すばらしい微笑をたたえながら、物静かにゆっくりと話をする。自動拳銃をたずさえており、射撃の名手で、ヘビースモーカーでもある。五十歳だが、年よりも老けていて、顔には深いしわがある。だが動作はきびきびしていて、健康上まったく問題はない。彼の司令部は、伝令や指揮官たちがいそがしそうに出はいりし、電話がしじゅう鳴りつづけ、無電機がたえず音をたてているといった状態で、まるで蜂の巣のようなさわぎだ。

 

 「政治部主席の張国燾は、太っていて、背が高く、すべすべしている。ほかの人がみなやせ細っているのに、どうして彼だけが太っているのか、ふしぎだ。

 

 「徽県で朱徳が司令部に足を踏みいれたちょうどその時、第四方面軍の師団長陳コウから、電話がかかってきた。朱徳は昂奮を感じた。この地方の紅軍の再会を記念する式が、次の日――毎日やってくる敵の爆撃機をさけるため――夕方近くにもよおされた。

 

 「何という再会だろう! 涙と笑いにむせびながら、たがいに抱きつくものがあり、腕をくんで歩きながらしきりに友の安否をたずねるものもある。朱徳も完全にその雰囲気にのみこまれた。

 

 「傷病兵輸送用として捕獲した西安蘭州公路のバス何台かが、送られてきた。第四方面軍には、バスをみたこともない農民がいた。彼らは、こんな代物に乗るのをこわがって、病気なのに歩いてゆくと言いはるのだった」