Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

八路軍の戦略、持久戦から敵の戦闘力と補給の消耗 『偉大なる道』第10巻②ー4

 五台山の朱将軍の司令部は、以前は地主の邸宅だった大きな白い建物だった。私(スメドレー)が二人の中国人新聞記者といっしょにそこを訪ねると、彼は腰掛けにすわって散髪してもらっているところであった。手を振って大きな声で「ようこられた」といった。散髪がすむと、床から天井まで大きな軍用地図のかかった部屋へ私たちを連れていった。日本軍と中国軍の位置を指ししめしてから、八路軍の戦略と戦術を説明してくれた。

 

 「戦略的にいえば、われわれは、持久戦、それから敵の戦闘力と補給の消耗をねらっている。戦術的には掃滅的な電撃戦をたたかっている。われわれは軍事的に敵より弱いから、いつも陣地戦を避けて機動戦と遊撃戦を併用する。敵の兵力の完全な破壊をねらうと同時に、遊撃戦によって敵を混乱、滅損、分散、消耗させる。われわれの遊撃戦が敵をきわめて困難な状況においこむので、正規軍は有利な状況のもとで機動戦を展開することができる」

 

 彼は将来の計画についても説明した。

 

 「われわれの計画は、華北と西北一帯の敵の背後に、多くの地区山間基地を設けることだ。――たとえば敵の機械化部隊が作戦できない五台山のここのようなところだ。正規軍はそうした基地に帰って、休息や補充や再教育をおこなうことができるし、その中で遊撃隊や大衆を訓練することができ、また小規模な兵器廠、学校、病院、合作社や地区行政機関をそこに集中する。われわれはそういう基地から出ていって、日本軍の兵営、防塁、戦略地点、弾薬集積地、通信線、鉄道などを攻撃することができる。

 

 目的を達すると部隊は姿をかくし、他の方面をおそう。それらの基地をかため、それを利用して、われわれの作戦領域をひろげてゆけば、ついに防禦戦略から戦略的攻勢への転換が可能になる。蒋介石もこの計画に賛成した。この五台地区基地は彼の許可を得てつくられた」