Out of Far East

東アジアの文化歴史の個人的覚書

キリスト教の普及活動VS紅軍 『偉大なる道』第10巻②ー11

 「ところであなたは洪洞の外国人宣教師から贈られた新約聖書を読むおつもりですか」と私はぶしつけにたずねてみた。実際、ある年配の外国人宣教師が彼に中国語訳の新約聖書をおくり、朱将軍はお返しに『ファシズムとは何か』を一部贈呈していた。

 

 「私は何でも読む」朱将軍は考え込むようにしていった。「私が宣教師と贈り物をやりとりしたなんて、誰も想像しないだろうな。私が聞いた話では、彼の聖書学校は紅軍をクリスチャンに改宗させるため、信者を派遣しているらしい」

 

 「そうです」と私が答えた。「彼らは私さえ改宗させようとしたんです。私は絶対に改宗しないというとおこりました」

 

 「誰が、誰を改宗させるか、みていようじゃないか」朱将軍はきっぱりといった。

 

 誰が、誰を改宗させたか、というのは正しかった。ウォルター・ジャッド博士――のちに有力なアメリカ国会議員になったが、当時は山西省汾陽の医療宣教師だった――は、1938年1月14日、漢口の医療宣教師の友人あてに手紙を書き、その人がその手紙を私に転送してくれた。ジャッドはこう書いていた。

 

 「多くの人々は、閻錫山は日本と裏で取引している、と考えている。事実、閻錫山軍の副司令は、6日前に私が彼の性病の治療をしていたとき、ここではもう戦闘はないだろうといっていた。中国の力は非常に小さく、打ちのめされているから、『政治的解決』しかないだろうというのだ。確かに山西軍の幹部たちはそう考えている。……将校たちは政治的平和を信じている。だが兵隊たちはそうではない。……そして八路軍は日本と裏で取引するような連中でないことははっきりしている。彼らは郷村、とくに山間の郷村を組織し、衣料その他の供給さえ準備している、――敵が疲れきるまで、何年でも自給自足でやっていこうというのだ。われわれのミッション・スクールでは、学生の半数が八路軍に加わったし、何人かの伝道師や教師も、それに参加した。彼らは30元から70元の月給の仕事をすてて、10元の仕事に移っており、しかも献身的で、信念に満ちあふれてはたらいている。私たちの教会の仕事が、なぜあんな風に中国人の心情をつかむことができないのか、不思議でならない。あのような信念と献身こそ宣教師の使命ではないか、と私は思う。だが、私が受けたような感銘を、私の同僚たちのあいだで共有することはできなかった。私たちの失敗の大きな原因は、私たちが教会の信者たちに十分な犠牲を求めなかった点にあるのではないか、と思う。彼らはあまりにも生ぬるい安易な地位にいる――私たちは、八路軍でなされているように、彼らのすべてを打ちこむことを求めなかったのだ……